東京電力福島第一原子力発電所事故後の2011年と2012年の秋に福島県内の広域においてスギの新梢と雄花を採取し,そこに含まれる放射性セシウム(^<134>Csと^<137>Cs)濃度を測定した。雄花と新梢の放射能は採取地の空間線量率および放射性セシウム沈着量と強い相関を示した。2011年秋の雄花の放射能は0.1 kBq kg^<-1>以下から260 kBq kg^<-1>の範囲であった。2012年秋における部位別の放射能は,2010年以前に展開していた旧葉で最も高く,2011年に展開した1年葉,雄花,2012年に展開した当年葉の順に低下した。旧葉または根から吸収されていた放射性セシウムが樹体内を転流し,雄花などに存在していたと考えられる。しかし,2012年の雄花における放射性セシウム濃度は前年の40%ほどに低下していた。これまでのところ,スギは事故直後に放射性セシウムをかなり吸収したものの,その後の吸収は少ないと考えられる。