森林利用学会誌
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総説
日本の森林地域における公道も含めた路網整備の方向性
鈴木 保志吉村 哲彦長谷川 尚史有賀 一広斎藤 仁志白澤 紘明山﨑 真
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2022 年 37 巻 1 号 論文ID: 37.5

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抄録

日本の森林面積の4割を占める人工林のおよそ半分が,一般的な主伐期である50年生を超えて本格的な利用期を迎えている(林野庁2021b)。資源の成熟と,利用間伐から主伐への移行に伴い集材対象木も大径化することとなり,集材システムや路網の対応が必要となってきている(鈴木ら2015,Nakazawa et al. 2019)。タワーヤーダ等大型の高性能林業機械を搬送・配置するため,また流通コストの低減に必要な大型の運材車両のためにも規格の高い林道の整備の必要性が高まっており,これを受けて2020年には林道規程の設計車両にセミトレーラが加えられる改定がなされた(林野庁2021b,c;林野庁森林整備部整備課2021)。

しかし伐出の現場である山岳地の森林に至るまでの中山間地の公道には,いまだ狭隘部が多くあるというのが現実の状況である。以降これを「公道隘路」と称する。山村の過疎に加えて,国全体でも今後さらなる人口減少が予想される中,地域の重要性が見直され,都市への一極集中から中山間地域を中心とする地方への分散定住が,持続可能な開発とならび耳目を集める状況となってきた。このような背景を受け,筆者らは2021年から科学研究費の補助を受けて,課題「持続可能な次世代分散定住社会のために今必要な森林地域の道路網整備の隘路はどこか?」への取り組みを開始した(日本学術振興会 2021)。この問題意識は,日本の森林資源を次の世代に豊かなかたちで引き継ぐことができるよう適切に管理育成利用するとともに,森林に関わる産業を中山間地の経済基盤とするために,森林地域の公道隘路を解消し公道と林内路網をあわせて全体的な道路網整備を行うべきだ,というものである(図-1)。研究期間は4年間でまだ端緒についたところだが,予備調査の段階で新たな問題や課題も見えてきた。

そこで本総説では,まず日本における公道すなわち一般道路行政と,林道行政の変遷について振り返る。次に,諸外国の状況を踏まえたうえで,これから解決していくべき問題について考察することで,日本の森林地域における公道も含めた路網整備の方向性について議論する。

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