森林利用学会誌
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論文
架線系システムの間伐作業による残存木損傷の回復状況および内部変色状況
竹嶋 一紗鈴木 保志山﨑 敏彦
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2024 年 39 巻 3 号 p. 91-102

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抄録

間伐作業時に発生する残存木の損傷について,年数経過による損傷の回復状況と内部変色状況の把握を目的として,間伐伐出作業直後の損傷の発生状況を記録し,9 年後にその経過を追跡調査した。調査地は,高知県香美市のスギ・ヒノキ人工林とし,スイングヤーダによる間伐伐出作業が実施された林分内に設置した。調査プロット内の損傷木 132 本から,作業直後の損傷程度が偏らないよう選んだ損傷木 53 本(合計 137 個)を分析の対象とした。9 年後に,これらの損傷について損傷程度を外観に基づいて 5 段階評価し,巻き込み部分を除いた損傷の外寸(幅,長さ)を計測した。また,対象木の内 16 本を選んで伐採し,損傷によって発生した内部変色の状態を調べた。9 年後の損傷の状況を発生時と比較した結果,すべての損傷において程度の悪化はなく回復傾向にあったが,損傷幅,長さが作業直後よりも大きい事例が確認された。内部変色については,損傷程度に関わらず元の損傷と同程度または大きく広がっていた。元の損傷と比較すると,変色幅は約 2 倍,変色長は約 3 倍の値を示した。このことから,内部変色を抑えるには間伐集材作業時の損傷を最小限に抑えることが重要と考えられる。

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