抄録
車両系機械による傾斜地での集材作業では,集材路作設にともなう土砂流出の防止など,林地保全面を考慮した作業方法に関する検討が求められている。本研究では,ミニフォワーダによる集材作業を対象に,集材路からの土砂流出を防止するための施設設置費用を林地保全費用として計上し,集材費用C_fと林地保全費用(堰堤作設費用C_<e1>およびのり面緑化費用C_<e2>)の和を最小とする集材路間隔を求めた。その結果,傾斜30°において総費用を最小とする集材路間隔は,C_fのみでは17mとなったのに対し,C_f+C_<e1>では21mとなり,C_f+C_<e2>では31mとなった。C_f+C_<e2>を最小とする条件での生産性は,2.87m^3/hrから1.99m^3/hrに低下し,また総費用は1,500円/m^3から2,990円/m^3と約2倍に増大した。これらはいくつかの仮定条件のもとで算定された結果ではあるが,林業経営と林地保全を両立させるという観点からは,傾斜地での高密な集材路網によるミニフォワーダ作業は回避すべきであろう。