森林利用研究会誌
Online ISSN : 2432-5996
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最新号
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論文
  • アルンプラパラット ワンチャイ, 田坂 聡明
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    東部タイにおいて、木材伐採禁止法令が制定された前後で森林破壊が見られた地区の位置および面積について,地理情報システム(GIS)を用いた分析を行った。タイ王国政府は,木材伐採が森林破壊の原因であるとして,1989年に木材伐採の全面禁止地域を定めており,本研究対象地域もその一部となっている。本研究では異なる6時期の森林-非森林地図をもとに,ベクター型GISを用いオーバーレイ手法により分析を行った。分析の結果,1973年次の森林は,1973〜1982年,1982〜1989年(伐採禁止法令制定前)の間にそれぞれ5.6%/年,1.8%/年,1989〜1991年(伐採禁止法令制定後)の間に2.8%/年の速度で非森林となっていることが確認できた。また,森林が非森林となったのは傾斜の緩やかな平坦な土地で,しかも道路から比較的近い土地であることが明らかとなった。このことは1989年の木材伐採禁止法令制定以後も森林破壊に歯止めがかかっていないことを物語っている。
  • 吉村 哲彦, 赤羽 元, 神崎 康一
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 195-204
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    林道のり面が崩壊を起こす事例が各地で見られるが,大規模な崩壊が起きると林地に多大な被害が及ぼされる。そこで,ファジィ理論を用いて,切取のり面及び盛土のり面の崩壊危険度の判定を試みた。崩壊危険度の判断システムは,奈良県十津川村の林道で行った調査の結果に基づいて作成した。のり面の崩壊が多く発生しているのは,内カーブの中心,外カーブの変曲点,林道幅の広い場合,急斜面の場合,切取のり面が高い場合であった。ファジィ積分法を用いて林道のり面の崩壊危険度の判定を行った結果,判別率は切取のり面で68.9%,盛土のり面で70.7%であった。数量化2類では,判別率がそれぞれ67.0%,72.1%となり,ファジィ積分法を用いても,数量化2類と同程度の判別率が得られることがわかった。ファジィ理論を用いるメリットは,地域に応じた判断システムを容易に構築できることであり,評価要因の重視度や評価要因ごとの崩壊危険度を調整することによって,この判断システムを他地域へ応用することができる。
  • 近藤 恵市, 神谷 信宏
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 205-212
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    林道災害のなかで重要な位置をしめる渓流横断部での被害について,地質,林道構造,地形の3つに関連する要因をとりあげ,数量化2類により分析を行った。地質要因から2要因,林道構造要因から6要因,地形要因から5要因の13要因により数量化2類分析を行った結果,集水域内の崩壊面積,集水面積,谷川構造物,谷川のり面高,シュミットハンマー値,弾性波速度が災害発生に大きな影響をもつ要因であった。林道災害への影響は,地形に関する要因がもっとも大きく,つづいて林道構造に関する要因,そして地質に関する要因の順であった。判別の的中率は86.5%とかなりよく判別できることが分かった。
  • 熊倉 由典, 児玉 理, 田坂 聡明
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 213-223
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    下刈作業用機械の開発の方向性や,具備すべき性能を検討するために,林地傾斜,土壌支持力,苗木,伐根,地拵え,倒木,下層植生の現地調査を行った。その結果,以下に示す適応条件を得た。下刈作業用機械は,(1)姿勢制御機構が必要である。(2)不連続設置型で,設置位置を選択できる機構が必要である。(3)機体の大きさは,機体の転倒や苗木への損傷を防ぐ点から苗木間走行ができる長さ150cm以内,幅60cm程度が望ましい。(4)伐根の斜面下側の高さと倒木の最大直径は,40cm以内の頻度が高いことから,乗り越え性能は40cm以上必要である。(5)枝葉の成長は,斜面下側が良く,等高線方向への移動は枝葉の回避や機体の横滑りから機体下側の苗木をひき倒す,根系を圧迫するなどが予想される。また,倒木は最急勾配方向へ倒れている割合が高く,走行への大きな障害となることが予想されるので最急勾配方向への移動が望ましい。
  • 酒井 徹朗
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 225-231
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    数値地形図を用いた路線計画システムにおける2つの路線探索アルゴリズムについて検討した。ひとつは始点から一定勾配の路線探索,他は任意の2点間を結ぶ路線探索である。前者は始点を中心とする一定半径の円周上に通過点を探索し,それを新たな始点として次の通過点を探索する。この方法では正確に指定勾配とおりの路線が探索できた。探索円100m,方位数16,分割数10の値で充分効率よく探索できることがわかった。後者は始終点間を結ぶ直線の垂直2等分線上に,その中間の高さに相当する点を探索し,その点を新たな仮の終点とし,始点と仮の終点の2点間の距離が指定された値以下になるまで繰り返す。最後に求められた中間点を通過点とし,その点を新たな始点として探索を繰り返す。この方法では始終点間の標高差が大きいほど通過点間の勾配の分布がばらつき,小さいほど一様になる。また,地形や探索制御要因の値により探索が失敗する場合もある。前者の方法と組み合わせれば,2点間を結ぶ一様な勾配の路線を探索できる。まだ幾つかの改良点はあるが充分計画支援に利用できる。
  • 酒井 秀夫, 坂本 和彦, 竹居 宏道
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 233-242
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    アーティキュレイト式ホイールトラクタの全木集材時の走行速度を分析した。空車登坂時は勾配の影響が大きく,勾配が急になるにつれて速度が低下し,6°〜13°では速度が6km/時前後であった。雨上がりに勾配11°の直線路ではスリップが大きくなっていた。最小旋回半径が小さいため曲線半径の影響は小さく,R=8mでも直線区間に対する速度の低下は1km/時ほどであった。積載量が4.6m^3以下の直線区間の実車降坂では,勾配が約-7°以下では2.6〜14km/時と大きくばらついていたが,-6°〜-13°になると,2.4〜4.6m^3の積載量では4〜7km/時であり,勾配に対して速度調節の影響があらわれていた。同じ積載量でも末口吊りの方が元口吊りよりも速度が低かった。実車走行では曲線半径の影響が大きく,勾配-11°前後において,直線区間では4.5〜7.4km/時であるが,R=30mでは3.5〜5.5km/時に,R=8mでは2.2〜3.6km/時に低下していた。勾配-5.5°,R=20mでも曲線半径の影響が見られた。以上の結果は,全木集材時の路線設計に資することができる。
  • 周 向陽, 藤井 禧雄
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 243-252
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    タワーヤーダ,プロセッサおよびスキッダを組み合せた集材・造材作業システムを取り上げ,汎用シミュレーション言語GPSSを用いて,木材生産性の観点から見た,機械の最適な組合せおよび各機械の位置関係などを検討するシミュレーションプログラムを作成した。本プログラムに,ある調査事例データを入力し,シミュレーションを行ない実績値と比較した結果,本プログラムは,現場での作業を適正に再現していることが分かった。さらに最適作業システムの検討の結果,現行のタワーヤーダおよびスキッダを使用した場合,プロセッサは,現行の約2倍の作業能力をもつ機種が好ましいこと,また,林道上におけるプロセッサとタワーヤーダの配置間隔は150m以内とすべきことなどが明らかになった。
  • 毛綱 昌弘
    原稿種別: 論文
    1995 年 10 巻 3 号 p. 253-261
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
    林業機械のマニピュレータとして使用されているナックルブームの操作性向上を目的として,マンマシンインターフェースである操作装置およびマニピュレータ先端部の軌跡制御装置の開発を行った。開発された制御装置では,3次元タイプのジョイスティックを使用しているため,オペレータは一本のジョイスティックを用いて移動方向と速度を入力することにより,マニピュレータの操作を行うことが可能となる。また,多くの林業機械ではテレスコピック機能を有し,自由度が一つ多い4自由度のマニピュレータが使用されているため,3次元座標空間内における軌跡制御を行うためには,追加条件が必要となる。本研究では,この条件として先端部までの距離とテレスコピックの長さを比例配分することにより,常にすべてのアクチュエータが協調動作を行う軌跡制御を試みた。この結果,軌跡制御では目標とする軌跡からのズレを20mm以内に収めながら移動することが可能となり,林業機械のマニピュレータとして十分な精度を得ることができた。また,移動速度を管理する機能を制御装置内に組み込むことによって,流量不足による制御成績の低下の防止,移動速度の高速化が図れた。
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