1994 年 9 巻 2 号 p. 61-71
林業労働の中でも生理的負担が大きい下刈作業時の衣内気候について調査を行った。得られた次の知見は,今後,下刈用作業服の設計に資することができるものと考えられる。(1)個人によって,腹部や背部に汗をかきやすい体質がある。(2)背部は開口部が少なく,さらに刈払機の肩掛バンドによる圧迫により,通気が阻害される。腹部もスボンのベルトや刈払機の肩掛バンドにより通気が悪く,作業停止後の休憩時もしばらくは代謝が活発なので,温度が低下しない。前部をボタン等にするとともに、肩掛バンドの改善が必要である。(3)下刈りは少し前傾して作業するため,胸部は日差しの影響が少ないが,背部は日差しの影響を強く受ける。(4)気化熱による体熱放散は気温,風,湿度,発汗量のバランスの上に成り立っており,衣服の素材や衣内空間の大きさも重要な因子と思われる。(5)休憩は日陰の効果が大きく,特に胸部,背部の温度,湿度が大きく低下する。休憩時の水分摂取により,今回,胸部,腹部の温度,湿度の急下降が見られた。水分補給,休憩場所を上手にとることにより,積極的な疲労回復を図ることが期待できる。