耳鼻咽喉科展望
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EBウイルス感染症
小林 信一
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2008 年 51 巻 4 号 p. 243-249

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抄録
EBウイルスは, 発癌ウイルとして知られているが, 特に小児領域で多くみられる疾患は伝染性単核球症, 移植後リンパ増殖性疾患 (Post-transplant lymphoproliferative disorder, PTLD), EB関連血球貪食症候群 (EB-VAHS, EB-HLH hemophagocytic lymphohistiocytosis), 伴性リンパ増殖性疾患 (X-Linked lymphoproliferative syndrome, XLP, Duncan症候群), 慢性活動性EBウイルス感染症などである。
この中で特に現在問題となっている疾患は慢性活動性EBウイルス感染症である。これは発熱, リンパ節腫脹, 肝脾腫, 咽頭痛などが反復または持続して出現し, 基礎疾患を有せずEBウイルス抗体価の異常高値を示す。予後は不良で, NK細胞に感染した26例中5例 (20%), T細胞に感染した34例中17例 (50%) が死亡している。治療にはacyclovir, ganciclovir, ara Aなどの抗ウイルス剤, プレドニン, シクロスポリン, VP16, 各種抗腫瘍剤の併用 (CHOP療法など), IFNα, 活性化T細胞輸注療法などが試みられているが, 明らかに有効な治療法はまだ確立していない。骨髄移植は24例で行われたが生着は50%とやや低く, 現段階では唯一の根治療法とはいえない状況である。今後より有効な治療法の開発が急務である。
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© 2008 耳鼻咽喉科展望会
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