日本林学会誌
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ヒバ稚樹針葉の無機成分の季節的変化
山谷 孝一
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1955 年 37 巻 9 号 p. 374-378

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抄録

筆者はヒバの成長が土壤により差異があるために,土壤により養,水分の吸収状態がちがうのではないかと考え,津軽半島南都のヒバ林下において,乾性,湿性およびポドゾル土壤を選定し,ヒバ天然生稚樹の新葉を6, 8, 10月の3回にわたつて採取し,生葉水分および灰分組成を調査して見た。その結果はつぎのとおりである。
1. 生葉の水分は春季から秋季にわずかに減少し,また,ボドゾル,湿性,乾性土壌の順に減少しているが,針葉の灰分量の順位は水分量とおおむね反対の傾向を示していた。
2. P2O5, K2O, Na2Oの量は春季に多く秋季に少なくなつているがCaO, MgOは反対に秋季に増加している。CiOの変化は明らかでない。土壤による無機成分の変動は6月では大きいが, 8, 10月ではあまりはつきりしない。
3. CaO, MgOにたいするK20, Na2Oの分子比率は春季には小さいが秋季には大きくなつており,春季における土壤間の差異はかなり大きい。8月頃までは湿性土壤は乾性土壤よりも小さい傾向があるが,ボジゾル土壤では大きくなつている。土壤によるこのような分子比率の変動は土壌の水分状態や化学的性質に原因しているように推定され,ヒバの成長状態もこれらの関係により特徴ずけられているようである。

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