抄録
落葉広葉樹の苗木を用いて,小型林分をつくり, 5種類の庇陰格子で滅光処理を行なって,林木の生態的な変化や物質生産についてしらべた。供試樹種として,アキニレの1年生苗,ヤマハンノキの2年生苗,トチウの2年生苗を用いた。林分密度は各樹種ごとに一定とした。処理期間はアキニレ128日間,ヤマハンノキ106日間,トチウ134日間である。
庇陰処理によって葉の陰葉化がおこり,庇陰が強くなるにしたがい単位葉重量あたりの葉面積は増加する。葉面積指数は庇陰によって増加するが,ある庇陰区で最大値に達して,それ以上庇陰が強くなると減少する。庇陰の強さと,これらの値の関係は樹種によって異なる。葉の縦方向の分布は,無処理区では中央部の層に集中するが,庇陰が強くなるほど縦方向の分布が均等な,いわゆる針葉樹型になる傾向がみられた。
各樹種とも,単位葉面積あたりの純生産量は,庇陰が強くなるほど少なくなり,単位個体重あたりの総葉面積は,庇陰が強くなるほど大きくなる。両者の変化の度合はトチウ,ヤマハンノキ,アキニレの順に大である。
アキニレとトチゥについては,各林分の全葉層が受ける相対的な光の強さを計算によって求めて庇陰によって起こる葉面積の増加,および乾物生産量の変化とをあわせて検討した結果,トチウはアキニレより庇陰下での光の利用能率が高いと考えられた。