日本林学会誌
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マツ苗における燐のうごき (II)
芽生えでの燐分画の変化
相場 芳憲
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1965 年 47 巻 4 号 p. 159-165

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抄録

前報15)で,休眠タネから発芽後30日までのクロマツをつかって,胚乳や幼植物での全燐のうごきをしらべた。この報告では,発芽したタネの幼根が無機燐を吸いはじめる時期,胚乳や幼植物での燐化合物の分画の変化,および無機養分の施与が幼植物の燐分画の変化におよぼす影響などをしらべた。
1) 発芽したタネの幼根が培地の無機燐を吸いはじめるのは,いつごろかを,トレーサーとしてH3P32O4をつかって,オートラジオグラフでしらべた。発芽してから2日目では,幼根にのみ 32Pがみとめられたが,発芽後4日目になると,幼根から吸われた32Pは胚軸をとおって子葉にまで移動した。
2) 燐化合物を酸不溶態,Ba-塩可溶態,Ba-塩不溶態,および無機態の燐の4つの分画にわけてしらべた。休眠タネにふくまれている燐の大部分(約80%)は,Ba-塩不溶態であった。発芽したタネの胚乳ではBa-塩不溶態が減少して, Ba-塩可溶態が増した。幼植物(胚)でも発芽するまではBa-塩不溶態が約 80% をしめていたが,発芽の前過程で酸不溶態の燐が,そして発芽の過程がすすむにつれて無機態の燐が著るしく増した。
3) 無機養分(燐をふくむ)の施与は,無機態の燐の増加をうながし,燐を与えないと植物体中の無機態の燐の減少が著るしかつた。無機養分を与えてもBa-塩可溶態の燐にはあまり大きな変化を与えないが,他の分画では燐の量が増した。

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