日本林学会誌
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アカマツ根の山火枯死・腐朽に伴う引張強度の低下
中根 周歩中川 勝範高橋 史樹
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1983 年 65 巻 5 号 p. 155-165

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抄録

広島県において山火後の経過年数と太さの異なるアカマツ根の引張強度を測定した。生きたアカマツ根では,根の断面積当りの引張強度は細根ほど強かった。しかし,枯死後の引張強度は経過年数に伴って,どの直径階の根も低下し,とくに細い根ほどその傾向は著しかった。一本の根の中心部と周辺部の引張強度を比較すると,枯死前,直後では中心部より周辺部のほうが強いが, 3~4年後では周辺部の引張強度の低下が進み,やがてその関係は逆転した。以上の実験結果にもとづき,断面積~引張強度関係の数学的モデルを構成し,このモデルと根の直径分布密度関数から根系の総引張強度の時間的推移をシミュレートした。その結果,土壌緊縛力に直接貢献していると思われる直径1cm以下のアカマツ細根は,山火後7~8年でほとんどその引張強度を喪失することが予測された。従来報魯されている伐採後の他樹種と比較して,焼死アカマツ根の土壌緊縛力の低下が比較的速いことが示された。

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