1991 年 73 巻 5 号 p. 327-338
24~55年前に山腹工事が行われた四つの旧崩壊地および一つの新生崩壊地の表層土壌(深さ0~5cm) および浅層土壌(深さ15~20cm) の物理的,化学的性質の経年変化について,それぞれの施工地周辺の崩れていない林地土壌と対比検討した。山腹工事施工地の土壌断面は,工事による植生回復によって土壌化が進み,表層や浅層土壌の炭素,窒素含有量は周辺部の土壌よりも少ないものの施工後の経過年数に伴って徐々に増加し,周辺部の土壌に近づきつつある。採取時の土壌含水比, pF 1.8および2.7における土壌含水比,間隙量などと施工後の経過年数との関係は炭素,窒素含有量と同様の傾向を示した。山腹工事施工地の浅層土壌では化学的,物理的性質の絶対値は小さいものの表層土壌と局じ傾向を示した。したがって,山腹工事施工地の土壌は物理的,化学的にみると徐々にではあるが,土壌化が進み,周辺部の土壌に近づきつつあることが推定された。