日本林学会誌
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森林のA0層における窒素無機化•有機化速度への含水比の影響
戸田 浩人杉崎 浩史生原 喜久雄
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1998 年 80 巻 4 号 p. 262-269

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抄録

斜面下部のスギ林,斜面上部のヒノキ林および落葉広葉樹林から採取したA0層を含水比を変えて室内培養し,窒素の無機化•有機化速度に及ぼす影響を調査した。培養は温度25°Cで,含水比を90,180,および270%に調節し,44日間行った。培養8日目の試料を用いて,15N同位体希釈法で窒素無機化•有機化速度を測定した。その結果,窒素無機化への影響はF3画分で顕著に現れ,含水比90%で純無機化速度が減退した。硝化活性はスギ林のみで見られ,含水比の高いほど硝化が著しかった。ヒノキ林と広葉樹林では高い含水比で培養しても硝化が見られなかった。ヒノキ林のF2画分を除き,総窒素無機化速度(Vm)および有機化速度(Vi)はともに,含水比90%で小さくなり,VmよりViの減少が著しかった。含水比の違いによるVi/Vmの差は,ヒノキ林と広葉樹林で大きかった。これは,乾燥する斜面上部で,乾燥に適応した微生物フロラが形成されていたためと推察された。

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