日本林学会誌
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多雪地帯のスギ造林地に侵入した広葉樹の種組成構造の特徴
長谷川 幹夫平 英彰
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2000 年 82 巻 1 号 p. 28-33

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抄録

スギ不成績造林地において, 伐採前の林分構造とスギ造林後に侵入した広葉樹の種組成構造の特徴について検討した。相対成立本数密度による伐採前の主な優占種は, 斜面下部ではスギ, 中部ではウダイカンバ, スギ, 上部ではブナであった。その皆伐跡地に造林したスギ幼齢林内に成立した優占種は, いずれの斜面位置でもウダイカンバ, ミズメ, ホオノキとなり, 斜面上部ではブナ, ミズナラが再生したが, 優占種ではなくなった。稚樹が最も多く発生した年はミズナラでは, 伐採年に,ウダイカンバ, ホオノキなどでは, 伐採後2年を経過したスギ植栽の翌年においてであった。ミズナラでは前生稚樹または伐採直前の落下種子から, ウダイカンバ, ホオノキは地拵え, 植栽によって発芽床が与えられた種子から発生したと考えられた。造林地に侵入する広葉樹は種子が埋土種子になり, 風および鳥などによって種子が広範囲に散布され, 皆伐, 地拵え, 植栽などの地表撹乱によって更新が促進される種によって構成されることが明らかになった。

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