抄録
茨城県北茨城市の落葉広葉樹林において, 斜面位置の異なる3カ所に試験地を設け, 地球温暖化ガスの一つであるN2Oの土壌からの生成に関する実験を行った。N2Oの地表面フラックス平均値は尾根付近で4.6, 谷頭部で10.3, 渓流域5.7 (μgNm-2h-1) であった。土壌円筒試料にアセチレン阻害法を適用した結果から, 渓流域におけるN2Oは主に脱窒過程により生成し, その脱窒量は20μgNm-2h-1 (1.8kgNha-1y-1相当) 程度かあるいはそれより大きいと推定された。また, その脱窒は硝酸態窒素の供給に大きく影響されていると考えられた。その他の地点では硝化過程で発生するN2Oの割合が高く, 脱窒量は微小であると考えられた。さらに, 斜面下部では脱窒酵素活性が認められ, 脱窒の可能性が示唆された。硝化能の高い斜面下部ではN2Oの生成量も多くなると考えられた。なお, 脱窒菌数と脱窒酵素活性の間に相関は認められず, 菌数以外の要因 (たとえば嫌気的条件) が脱窒酵素活性の発現に主に関与していることが示唆された。