2002 年 84 巻 1 号 p. 33-36
秋田県阿仁町の佐渡スギ保護林においてスギとブナの更新基質の利用特性の違いを検証し,それが両種の混交に果たす役割について考察した。稚樹(幹長30~130cm),幼樹(胸高直径5cm未満,幹長130cm以上),立木(胸高直径5cm以上)のすべてのサイズクラスにおいてスギは根株上での密度が著しく高く,しかも根株上に生育している高木種の中で優占していた。一方,ブナは特定の基質に偏った分布傾向を示さなかったが,地表面の面積比率が圧倒的に高いことを反映して,地表面に定着したものが大部分を占めていた。この林分ではスギとブナはそれぞれ根株と地表面をおもな更新基質として利用し,その更新基質利用特性の違いによって両種の混交状態が維持されていると結論した。