日本林学会誌
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北関東におけるシイタケ生産のためのコナラ林利用の変遷と今後の見通し
斉藤 修
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2004 年 86 巻 1 号 p. 12-19

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抄録

本研究は, 人為管理によって維持されてきたコナラ林が残る北関東において, シイタケ生産を主とするコナラ林の利用のこれまでの実態を質的, 量的に明らかにし, 今後の利用について予測した。調査地域は埼玉県と栃木県のシイタケ産地とした。薪炭利用が盛んであった1950~1960年代, 調査地域では広葉樹林の70%以上が薪炭用に利用されていた。燃料革命後, 薪炭生産が衰退し, シイタケ生産がおもな利用形態になったが, 現状での広葉樹林の利用は7~22%であり, 薪炭利用期と比較して大幅に低下した。シイタケ原木のほとんどはこれまで産地内から調達されてきたが, 生シイタケ産地では産地外からの原木移入が増える傾向にある。また, 近年はシイタケ輸入の増加や生産者の高齢化, 後継者不足などによりシイタケ生産量の減少が顕著であるほか, 原木林伐採後の下刈り, 萌芽整理などの管理も以前ほど行われていないことがわかった。今後もこのような生産縮小の傾向が続くと, 2015年までにはシイタケ産地の広葉樹林の90%前後が放置されるおそれがある。

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