日本林学会誌
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倒木上のコケの高さがエゾマツ実生の生残と成長に与える影響
飯島 勇渋谷 正人斎藤 秀之高橋 邦秀
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2004 年 86 巻 4 号 p. 358-364

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抄録

倒木上のコケの高さがエゾマツ実生の生残と成長に与える影響を明らかにするため, コケがない倒木 (FLB), コケが低い倒木 (FLS), コケが高い倒木 (FLT) を対象に播種実験を行い, エゾマツ実生の発芽率と生残率,形態ならびに根の分布, 各器官重を調査した。発芽率はFLTで有意に小さく, 生残率は倒木間で差がみられなかった。コケの高さや実生の生残•枯死によらず, 実生の主根の大部分は腐植層や材部に分布していた。当年生実生の個体重はFLT上で最も小さかったが, FLT上の実生は他の倒木の実生より幹が長く, 幹へ多くの器官量配分を行っており, 高いコケによる被陰に対し形態および器官量配分による順応を行っていたと考えられた。1年生実生の個体重はFLSよりFLB上の実生が小さかった。FLB上の1年生実生の根長が有意に短く, T/Rが高かったことから, FLBでは1年生時の根の伸長が制限され, 個体の成長が抑制されたと考えられた。エゾマツの発芽および定着にはFLSが適していると考えられた。

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