ジャーナル「集団力学」
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日本語論文(英語抄録付)
論文「四川大地震被災地における中国NGOの救援活動」に関する対話
渥美 公秀陳 頴
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キーワード: 四川大地震, NGO, 政府, 被災者, 中国
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2011 年 28 巻 p. 15-41

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抄録

 本稿は、論文「四川大地震被災地における中国NGOの救援活動」(陳・杉万,2010)を巡って、筆者らが行った対話を紹介するものである。対話は、第一筆者が、論文で採り上げられているNGO(NGO備災センター:以下、DPC)に関して、4つの論点からなる質問を準備し、論文の筆者(本稿の第二筆者)に提示したことから始まった。その後、約3ヶ月にわたり、電子メールによる対話が続いた。また、4つの論点は、DPCに転送され、スタッフから返信を得た。
 第1に、政府とDPCとの関係を論じた。DPCは、人脈を介した政府との信頼関係のもとで、政府の資源を活用しながら活動していることを確認した。また、西洋と比較すると、中国では、政府とNGOとの格差が大きいゆえにNGOが発展しにくいと判断したが、民主的運営を標榜する西洋のNGOに見られる問題点についても議論した。
 第2に、DPCが依拠している活動モデルについて、特に、被災地からの撤退基準に注目して議論した。その結果、住民たちの能動性・主導性を引き出すことができた時点で撤退するということがわかった。能動性・主導性を引き出せたかどうかの判断は、実際上、困難であることも確認した。
 第3に、DPCと被災者との関係が論点となった。被災地では、どうしても救援活動から漏れてしまう被災者が出てくる。DPCは、資源の許す範囲で、漏れた人々に配慮するのが実情である。資源の有限性からこの現状を容認しつつも、NGOとしては、漏れた被災者に配慮することにこそ存在意義を見いだすべきではないかという議論を展開した。
 第4に、中国のNGOの現状と展望について議論した。中国のNGOは、十分な活動を展開できる現状にはないが、中国社会に対するメディアの一面的な評価に囚われず、DPCのような活動を地道に展開していくことが中国社会を前進させるだろうという展望を得た。

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