抄録
性差医療(Gender-specific medicine)とは,①男女比が圧倒的にどちらかに傾いている病態,②発症率はほぼ同じでも,男女間で臨床的に差をみるもの,③いまだ生理的,生物学的解明が男性または女性で遅れている病態,④社会的な男女の地位と健康の関連などに関する研究を進め,その結果を疾病の診断,治療法,予防措置へ反映することを目的とした改革的医療である。わが国では,性差医療の実践の場として「女性外来」が誕生した。EBMとNBMの両者を基盤とした総合外来である。女性外来では,年々精神症状を主訴とする患者が増え,平成22年度には,20歳代〜70歳代まで全年齢層で患者の2割を占めている。女性外来の現場でも女性医師のワークライフバランスが問題となっている。男女が職場だけでなく家庭での責任と役割を果たすことが出来る「働くルール」の確立が不可欠である。労働基準法では,産前産後の休業,妊婦の請求により時間外労働や休日・深夜勤務が制限されること,産後の育児時間の保障などが定められている。育児休業や介護休業制度も定められている。一般女性労働者と同様,女性医師がこれらの法的権利を行使できる諸条件の整備が必須である。