総合病院精神医学
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総説
HIV/AIDSにおける精神障害
中西 幸子赤穂 理絵
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2011 年 23 巻 1 号 p. 35-41

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抄録
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus,以下HIV)の発見・分離から28年,HIV感染症の治療は大きく進歩した。なかでも,多剤併用療法を基本とした強力な抗レトロウイルス療法(highly active antiretroviral therapy:HAART)の確立により予後は大幅に改善した。それに伴い,精神科領域でもHIV脳症の軽症化や薬剤性精神障害の多様化などの病態変化がみられている。また,根強い偏見などHIV感染者の抱える心理社会的ストレスは未だ多い。これらの理由から,HIV感染者において精神障害の合併率は非感染者に比べて高く,5割前後との報告もある。HIV感染者の精神障害は,適応障害,物質関連障害,気分障害,HIV脳症などが多い。治療に際しては,HIV治療薬との併用注意・禁忌薬も多いことから,向精神薬の使用は注意を要するため処方は必要最小限とし,支持的精神療法などとの併用が望ましい。行動上の問題への対応や心理社会的ストレスへの介入には,ケースワーカー,HIVカウンセラー,自助グループなど,多方面からの協力も有用である。
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© 2011 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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