日本医科大学付属病院高度救命救急センターに自殺未遂もしくは自傷行為で入院した患者を対象に,その特徴,特に未遂手段・自傷手段を調査した。地域特性を考慮しなくてはならないが,当センターに入院した自殺未遂者・自傷者では,向精神薬の処方例がその85%を超えていた。未遂者の53%,自傷者の76%が向精神薬を未遂・自傷手段として過量服薬し,その割合は女性に多かった。さらに未遂者の45%,自傷者の48%がアルコール乱用もしくは依存症の診断に該当し,その割合は男性に多かった。この結果から,われわれは救命救急医療の場に搬送される未遂者,自傷者に対して,再自殺予防の見地から性別を考慮した向精神薬とアルコールによる精神疾患への早期介入の必要性を提案した。これらの疾患は,それ自体が自殺のハイリスク因子であり,また,自殺企図のハイリスク因子である気分障害,統合失調症そしてその近縁疾患に共存することに注意を払う必要がある。