総合病院精神医学
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2010年総合病院基礎調査からみた総合病院精神科の現状
日本総合病院精神医学会医療問題委員会
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キーワード: 総合病院, 精神科, 診療報酬
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2012 年 24 巻 1 号 p. 59-70

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抄録

2010年総合病院精神医学会基礎調査は,総合病院精神科840施設に実態調査を依頼した。 最終的に467施設から回答があり,回答率は55.6%であった。最終的に427施設の結果を集計した。 総合病院精神科の現状は以下のようにまとめることができる。 ①総合病院精神科は,救急医療,緩和医療,臨床研修など,がんや救急関連など身体科とも連動した重要な医療および医師の教育などの機能を提供している。②上記の機能は入院病床を有する施設,特に精神科病床で入院可能な施設において中心的に行われていた。③精神科病棟の入院基本料は13対1が新設されたが,前年度15対1の施設の3割近い施設が移行したものと推測された。④精神科病床数は前年度に比べて変わらない施設が多数であったが,減少している施設のほうが増加した施設よりも多かった。⑤精神科医数は変化がなかった施設がおよそ半数を占めたが,増加した施設のほうが減少した施設よりも多かった。⑥コメディカルなどのスタッフ数は,入院可能な施設においては入院病床をもたない施設に比べて多いが,全体としてはそれぞれ1〜2名ずつと決して多くはない。⑦精神科入院病床を有する施設を中心に,m-ECTなど重要な機能を有している。⑧入院基本料に関しては,精神科救急入院基本料をはじめとする高い診療報酬が期待できる算定項目については,算定できている施設はまだきわめて少ない。 総合病院精神科は機能の多様化と経済的基盤の弱さが指摘されてきたが,13対1の入院基本料や精神科救急入院料など特定入院料や診療加算などが算定できた施設では,経営状態の改善があったことが推測される。しかし,特定入院料も診療加算も算定できている施設は非常に少ない場合が多く,多数の総合病院精神科の経営改善に寄与しているかどうかについては慎重な検討が必要であると考えられる。

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© 2012 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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