2014 年 26 巻 4 号 p. 397-403
精神症状により現実検討能力に支障のある患者における身体的治療への「同意」において,法的規定は十分に整備されておらず,臨床の現場ではしばしば混乱が生じている。特に,手術や抗がん剤治療などの侵襲性の高い医療行為については倫理的観点から十分な検討が必要である。精神症状が身体的治療への同意に少なからず影響したと考えられた4症例を呈示したうえで,同意能力の客観評価を試み,それぞれの問題点を考察した。さらに,わが国で慣習的に多く行われている家族による代理同意は,法的根拠が十分ではないことを示し,大学内の倫理委員会に審議を求めた試みなどを紹介した。最後に諸外国の代理同意における現状を比較検討し,今後のわが国における規定の整備に向けた問題提起とした。