総合病院精神医学
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総説
せん妄の精神生理学的基盤
松島 英介
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2015 年 27 巻 1 号 p. 18-26

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抄録

せん妄の病態を解明するために,せん妄患者の生理学的基盤を検討した研究を概観した。頭部CTや頭部MRIなどの脳形態画像を用いての検討では,大脳皮質の萎縮や白質の高信号域,基底核病変などの所見が認められた。頭部SPECTを用いた脳機能画像による検討では,脳血流が前頭前野で減少,線条体・内側側頭葉で増加あるいは視床・基底核で減少などの所見が認められた。脳波では,後頭部の背景律動の徐波化や全般性の徐波成分の混入などの所見が認められた。脳波と眼球運動を組み合わせると,過活動型せん妄では脳波は低振幅・徐波化し,遅い眼球運動の上に速い眼球運動が重なるRSタイプの出現が特徴的にみられた。これらはがん患者の術後のせん妄や抗コリン薬によるせん妄でもみられることがわかった。これまでのせん妄についての生理学的基盤を基に,がん患者で多くみられる低活動型せん妄について生理学的に検討することは,せん妄全体の発現機構を解明するうえで重要であると考えられた。

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© 2015 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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