2018 年 30 巻 2 号 p. 133-140
近年,発達障害の患者が精神科外来を訪れることが増えており,発達障害の患者に対して,医療・産業・司法のそれぞれの領域で,適切な理解と対応が必要と考えられる。医療の領域では,発達障害の患者を隔離室に入室させるときに,どのようなルールで隔離室入室となり,どのような状態になれば隔離解除となるかが,視覚化して明確に示されることが大切である。産業の領域では,うつ病で休職している患者に発達障害もみられた場合,その特性を考慮して,職場復帰支援プログラムがその患者にとって苦痛とならないように,注意されなければならない。司法の領域では,発達障害の患者が被害者にも,加害者にもなる場合があることを理解し,それぞれに対して,社会的コミュニケーションの障害によって事件のときの状況や感情が伝わりにくい場合があることを考慮する必要がある。本稿では以上のような点に関して,それぞれ架空の症例をあげて論じる。