総合病院精神医学
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総説
成人期ADHD
岡田 俊
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2018 年 30 巻 2 号 p. 127-132

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抄録

ADHD児童の追跡研究によれば,ADHDの多くは成人期まで持続すると考えられてきたが,近年発表されたコホート研究の結果は,小児期から成人期への移行は多くないこと,また成人期になってからADHD症状が出現するケースが少なくないことを報告している。成人期までADHDが持続するか否かは,神経生物学的基盤と臨床症状に相違があり,ADHDが異質性のある障害群である可能性を示唆している。成人期になってADHD症状が認められる場合,その症状が小児期にも認められるかどうかを確認することが大切であるが,リコール・バイアスもあり,生育歴の正確な聴取は時に困難を伴う。特に併存障害がある場合には,併存障害が閾値下のレベルのADHD症状を増悪させている可能性があり,併存障害の軽快後にADHD診断の再検討が求められる。 近年のエビデンスは,ADHDが異質性のある病態からなる症候群であり,成人期まで持続するケースはその一部であることが示唆される。ADHDが行動上の特性によってくくられた障害である以上,このように異質性を有することは操作的診断基準の宿命というべきかもしれない。成人期ADHD,特に成人期になってから診断されるADHDに限った場合,ADHD症状があったとしても,それが小児期から持続するものか,あるいは,併存障害によって閾値下のADHDが際立ってADHDと診断できる症状がそろうに至ったものか見極める必要がある。成人期ADHDの診断は,併存障害の軽快後に再検討が求められる。

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© 2018 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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