2018 年 30 巻 3 号 p. 229-234
震災後の女性のメンタルへルスについて,東日本大震災後の災害拠点病院,いわき市立総合磐城共立病院精神科の2症例と女性の自殺未遂症例の動向を紹介した。震災発生後,震災と避難に関連したストレス以外に,犯罪と虐待の増加がメンタルへルスに悪影響を及ぼした。女性の自殺企図は,震災翌年の平成23年より3年間,毎年7 〜9月に症例数のピークを認めた。この時期は,お盆,帰省,夏季休暇などの時期にあたり,震災被害者の埋葬や避難に関連して家族の問題が表面化し,トラブルを生じやすく,また,異性との交遊が活発化し,恋愛や性に関連した問題が精神疾患発症のトリガーとなる例が増加した。震災後の女性のメンタルヘルスへ影響を与える諸要素について考察した。