女性の健康,特に妊娠については社会的決定要因の影響を強く受ける。近年,性交経験率の低下により,10歳代の人工妊娠中絶および出産は減っている。しかし,心の傷や貧困に適応するためにリスクの高い性行動を選択し,大人からの暴力や性的搾取の結果として妊娠するもの,特に15歳以下の妊娠については減っていない。このような子どもたちは経済的あるいは心の貧困家庭で育ち,面前DVや身体的・心理的・性的虐待を受けてきた結果,自己肯定感が低い。居場所を求めて家出をした後,JK ビジネスなどの性的搾取により深刻な被害を受けるケースもある。
10歳代で出産に至った場合は貧困に陥るリスクが高く,再び性産業での搾取を受けたり,依存した男性からのDV被害を受けやすい。そのような環境で育つ次世代にも連鎖が起こる。女性に対する暴力・貧困・望まない妊娠の連鎖は,公衆衛生学的な課題ととらえ,包括的な取り組みの推進に向けて働きかける必要がある。
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