総合病院精神医学
Online ISSN : 2186-4810
Print ISSN : 0915-5872
ISSN-L : 0915-5872
総説
安楽死制度と精神医学
櫛野 宣久古茶 大樹
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 30 巻 3 号 p. 235-241

詳細
抄録

ヨーロッパの安楽死に関する議論は,医学専門家だけでなく,哲学,倫理,神学などの分野の専門家によっても倫理原則のコンセンサスを形成するために,1990年代から積極的に行われてきた。2000年代には,ベネルクス3国では安楽死や医師による自殺幇助が相次いで合法化された。その他の国や地域でも自殺幇助が合法化されており,終末期医療のあり方について幅広い視点から議論されている。本稿では終末期ケアを取り巻く状況を概観し,精神医学との関わりや求められる役割について論じた。世界における安楽死や自殺幇助の動向と,安楽死が合法化された国の制度を元に,その問題点を解説した。そのうえで,安楽死や自殺幇助が「患者の権利」の一部であるという考えもあることを認めながら,人生の最終段階における医学の立場を考察した。緩和ケアはその対象を拡大しており,精神医学ではさらに難しい課題があると考える。

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top