電気けいれん療法(ECT)において治療効果を得るためには,けいれん閾値を超える適切な電気刺激量を設定し,十分に全般化した発作を誘発することが必要である。しかし,治療機器の最大出力を用いても十分な発作が得られない症例はまれではない。そのため,発作誘発困難例への対応は臨床的に重要な課題となっている。近年研究が蓄積されつつある右片側性超短パルス波(RULUBP)ECTは,認知機能障害が少ないことが最大の特徴であるが,従来の手法と比べてけいれん閾値が低いことも明らかになっている。したがって,発作誘発困難例において,RUL-UBP ECTへの切り替えが有用である可能性がある。本稿では,両側性短パルス波ECTを最大出力で行っても有効な発作を誘発できなかった緊張型統合失調症の1例を報告する。本症例では,RUL-UBP ECTへの切り替えによって有効な発作を誘発できるようになり,寛解を得ることができた。この手法は,発作誘発困難例における新たな選択肢となりうると考えられる。