総合病院精神医学
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総説
PTSD と炎症
堀 弘明
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2019 年 31 巻 2 号 p. 160-173

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抄録

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は,再体験症状をはじめとする古典的な心理・行動症状によって特徴づけられる精神疾患である。一方,PTSDと免疫・炎症系変化の関連を示唆するエビデンスが蓄積されてきている。疫学研究では,本疾患の患者はメタボリック症候群や動脈硬化性心血管疾患,自己免疫疾患などの免疫系異常が関与する身体疾患の合併率が高いことが示されている。また,健常対照者と比較してPTSD患者では,血液中のinterleukin-1βやinterleukin-6,tumor necrosis factor-α,C-reactive proteinなどの炎症マーカーの濃度が高値を呈することが報告されている。さらに,炎症は単にPTSDに関連するというだけでなく,本疾患の病因・病態に重要な役割を果たす可能性も指摘されている。本総説では,初めにPTSDにおいて炎症が亢進していることを示した研究結果を紹介し,続いて本疾患と炎症系が関連するメカニズムを考察する。本研究分野の重要な臨床的意義として,炎症系を標的とした新規PTSD治療法の可能性についても取り上げる。

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© 2019 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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