2020 年 32 巻 3 号 p. 238-245
日本のアルコール医療における大きな課題は,巨大なtreatment gap(推定未治療率95.4%)であり,その克服には,アルコール専門医療機関以外でのアルコール依存症などアルコール使用障害(AUD)患者への初期診療が切に望まれる。しかし,多くの精神科医はAUD患者に苦手意識を感じており,総合病院勤務の精神科医も例外ではない。実は,総合病院(多くは基幹型臨床研修病院でもある)入院中のAUD患者に介入して断酒・減酒を志向した治療へ導入することは,いくつかtipsを押さえれば非常に効果的・効率的である。また,精神科やそれ以外の科に進む研修医や若いコメディカル・スタッフへの教育効果も高い。
本稿では,筆者が中規模総合病院で入院中のAUD患者に介入した治療成績(平均治療期間663日の男性147名・女性34名:断酒36.5%,減酒22.1%,飲酒13.3%,不明28.1%など)を紹介するとともに,軽装備で介入を効果的に行うための院内システムの構築について,経験と考察を述べた。