2020 年 32 巻 3 号 p. 287-294
わが国の自殺者数は,他の先進諸国と比べ非常に高い水準にあり,自殺企図患者に精神科医が関わることの重要性が増している。今回,救急受診した自殺企図患者を比較,調査することによって,緊急度・重症度の異なる自殺企図患者の社会的背景,ストレス因子,心理学的側面の違いから,介入方法などについて検討を行った。結果は,三次救急病院に搬送された者が,二次救急病院に搬送された者と比べ,自殺企図の既往をもつ者が有意に多く,同居人がいない例が有意に多かった。両施設とも約半数は,自殺企図の契機となったエピソードが家族もしくはパートナーとの関係性に関連しており,衝動性もしくは自己顕示性を心理的特徴とした者が多かった。自殺企図行為を繰り返すうちに,身体的な重症度の高い自殺企図となる可能性があり,軽症のうちに予防対策を講じ,周囲の支援が得られるような地域と連携したシステムを構築することが重要と考えられた。