2020 年 32 巻 3 号 p. 295-303
2014年,日本透析医学会は「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」を公表した。プロセスのはじめに患者の意思決定能力の有無が問われるため精神科医への意思決定能力評価依頼が増えている。われわれは臨床現場で本提言を運用した経験をふまえ,次のような課題を認識した;(1)患者の意思決定能力評価の具体的な手法や記録方法が記載されていない,(2)意思決定能力の判定困難な患者の処遇が未定である,(3)意思決定能力があり透析継続中止を希望する患者には精神科医等の第三者が介入できる余地がほとんどない,(4)透析非導入や継続中止を選択した後の患者・家族・医療従事者へのサポート体制が不足している。われわれは,本報告内で症例を基に4 つの課題への解決案を提示した。2020年に公表予定の新提言が,透析医のみならず精神科医にとって臨床現場ですぐに活用できるような提言となることを願う。