抄録
症例は32歳の初回妊娠の女性で,妊娠26週0日で吐血を主訴に近医を受診し,経過観察目的で入院していた.26週2日に貧血の進行と持続する吐血のため当院に搬送となった.来院時の胸腹部CTと上部消化管内視鏡検査では下部食道の屈曲とその口側の著明な拡張を認め,食道内腔には多量の血液貯留を認めた.母体はショック状態であり,胎児仮死も来していたため,即座に緊急手術となった.帝王切開・噴門形成・胃瘻造設術を施行.分娩児は917 gでapgar-score 4点の男子.食道アカラシアはsigmoid typeで,嘔吐を契機として広汎な粘膜下血腫を来し,その破綻により高度な貧血を来したものと考えられた.術後は母子ともに経過良好で,母体は術後18日目に退院,児は103日の入院管理後退院となった.文献的考察を含めて報告する.