日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
糖原病Ia型に合併した肝細胞腺腫に対し2回の切除術を施行した1例
池田 直哉福永 潔橋本 真治近藤 匡小田 竜也佐々木 亮孝大河内 信弘
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2010 年 43 巻 10 号 p. 1019-1024

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抄録
 糖原病Ia型は先天性糖代謝異常症の一つで,多発肝細胞腺腫を高率に合併する.今回,同腺腫内出血に対し,肝切除術を2回施行した1例を経験したので報告する.症例は1歳時に糖原病と診断され,多発肝細胞腺腫を経過観察されていた18歳の女性で,突然の左上腹部痛と発熱を認め,精査で肝外側区域の腺腫内出血と診断された.止血のため選択的肝動脈塞栓療法を施行したが,腹痛や発熱が続いたこと,および悪性腫瘍の可能性を否定できないことから,肝外側区域切除術を施行した.その3年後,肝右葉の腺腫内出血を伴い増大傾向が見られた腺腫に対し,再度の肝切除術を施行した.糖原病に伴う多発腺腫には,肝移植術が根本的治療であるが,脳死ドナーが少ない本邦において,切除術を中心とした腺腫治療が有用であると考えられた.また,多発腺腫の治療法を選択する時に,30歳代で肝癌発生が多いことを留意すべきと思われた.
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