日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
原著
p Stage II-III S状結腸癌に対する腹腔鏡下手術の評価
勝野 剛太郎福永 正氣永仮 邦彦菅野 雅彦李 慶文須田 健飯田 義人吉川 征一郎平崎 憲範
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 43 巻 6 号 p. 609-616

詳細
抄録
 はじめに:2005年度版大腸癌治療ガイドラインではstage0,I結腸癌に対する腹腔鏡補助下大腸切除術(laparoscopy-assisted colectomy;以下,LACと略記)は標準治療の一つとして認められているが,進行大腸癌における手術成績・侵襲性・安全性・長期遠隔成績はいまだ十分明らかにされていない.現在,国内外で臨床試験に基づいた遠隔成績が報告されつつあり,我が国ではJCOG0404の登録が終了したところである.方法:当院にて2009年1月までに大腸癌に対して施行した1,007例のLACのうち最も症例数が多いS状結腸癌298症例のうちS状結腸切除術施行された根治度A231症例を対象とした.手術成績(出血量,手術時間など)・侵襲性(在院日数,鎮痛剤使用など)・安全性(術中術後合併症)について早期(LAC0-I:98例)と進行期(LACII-III:133例)での比較を行い,進行期でのLACの有用性・安全性を評価するとともに長期遠隔成績の検討も行った.結果:LACII-III群では入院中の化療導入のため在院日数が13.1±7.1日とLAC0-I群:11.5±5.1日に対し若干長かったが(有意差なし),そのほかの検討項目に関しては両群ともに有意な差は認めなかった.また,根治度A症例病期別累積5年生存率ではII:96%,IIIa:93%,IIIb:85%と遠隔成績も良好な結果であった.結語:高度の多臓器浸潤やイレウスなどを除いたS状結腸進行癌(II-III期)に対するLACは術中・術後の合併症頻度は低率かつ5年生存率も良好であるので,現時点でp stage II,III S状結腸癌(cur A)に対する腹腔鏡下S状結腸切除の適応は妥当であると考えられた.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
次の記事
feedback
Top