抄録
症例は62歳の男性で,胸痛を主訴に来院し,胸部中部の食道扁平上皮癌の診断のもとD2リンパ節郭清を伴う右開胸開腹食道亜全摘術を行った.術後の病理検査で低分化型扁平上皮癌成分が4/5,腺癌成分が1/5の腺扁平上皮癌(混在型),pT1bN2M0,pStage IIと診断された.腺癌成分が少ないものの,脈管侵襲(ly1,v2)はいずれも腺癌成分によるもので,#109 Lに1個のみリンパ節転移を認めた.文献的には食道腺扁平上皮癌のリンパ節転移の多くは扁平上皮癌成分であり,腺癌成分のみが転移したものは本邦2例目であった.