抄録
症例は55歳の男性で,1996年胃潰瘍穿孔にて幽門側胃切除,ビルロートII法再建術を施行された.2008年2月嚥下困難のため近医で上部消化管内視鏡検査を施行された.食道狭窄を指摘され,当科紹介入院.精査の結果,胃切除術後残胃空腸吻合部狭窄症,輸入脚症候群および逆流性食道炎に起因する食道良性狭窄症と診断,外科的治療適応と判断された.術前合併症は低栄養,肺気腫,糖尿病で,空腸瘻造設による栄養状態改善の後,2期的に胃空腸吻合部再建術を施行した.術後重篤な合併症は見られず,食道狭窄部に対し内視鏡的バルーン拡張術を行い改善した.本症例のような良性食道狭窄の治療では,全身状態を考慮した計画的な治療戦略を構築することが重要である.