日本消化器外科学会雑誌
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原著
同時性肝転移を有する大腸癌原発巣切除時における術後短期成績に関する検討
杉本 起一石山 隼秦 政輝高橋 玄小島 豊五藤 倫敏田中 真伸仙石 博信冨木 裕一坂本 一博
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2011 年 44 巻 8 号 p. 944-954

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抄録

 はじめに : 切除不能遠隔転移を有する症例における原発巣切除の是非に関して,現時点ではコンセンサスは得られていない.特に肝内に広範囲の転移巣を有する同時性肝転移症例では,術前から肝機能障害や黄疸,腹水を認めることがあり,原発巣に対する治療方針の判断が難しい.今回,我々は同時性肝転移症例に対する原発巣切除時における術後短期成績およびその予測因子についてretrospectiveに検討し,原発巣切除の適応を慎重に検討すべき症例の選別について考察した.対象と方法 : 過去10年間に同時性肝転移を有する症例のうち,肝転移巣は切除せず原発巣切除のみ施行した81例を対象とした.術後短期成績として,在院死亡と術後合併症に関して,周術期の臨床病理学的因子を用いて検討した.結果 : 在院死亡は6例(7.4%)に認めた.多変量解析では,在院死亡の予測因子として,T-Bil値高値のみが独立した因子として選択された(P=0.04,Odds ratio=24.13).術後合併症は34例(42.0%)に認めた.術後合併症発生群と非発生群の2群間において,単変量解析で有意差を認めたのはT-Bil値高値のみであった(P=0.01).その他の臨床病理学的因子では有意差を認めなかった.考察 : 同時性肝転移症例に対する原発巣切除の適応を含めた治療方針の決定の際には,術前T-Bil値を十分に考慮する必要があると考えられた.

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