日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
胃全摘術を要した急性胃軸捻転症の1例
深瀬 耕二伊関 雅裕森川 孝則佐藤 俊富永 剛海野 倫明
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2011 年 44 巻 8 号 p. 963-969

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抄録

 症例は74歳女性で,増悪する右季肋部痛のため当院紹介となる.来院時上腹部膨満著明,右季肋部に圧痛を認めた.CTで食道裂孔より胃が左胸腔内に嵌入,胸腔・腹腔内で胃は著明に拡張していた.胃管挿入による減圧を試みるも困難であった.さらに検査中ショック状態に陥り,食道裂孔ヘルニア嵌頓の術前診断で緊急手術を施行した.胃は臓器軸性に捻転し一部が食道裂孔より胸腔内へ嵌頓していた.食道胃接合部と幽門の絞扼により胃は広範囲に壊死しており胃全摘術を施行した.術後食道空腸吻合部に縫合不全を発症したが保存的に治癒した.胃軸捻転症は比較的まれな疾患であり,慢性的な経過を取り再発を繰り返すことも少なくない.横隔膜へルニアに伴う急性胃軸捻転の場合緊急手術となることもあるが,整復は容易であることが多く,本症例のように広範囲胃壊死での胃全摘術例は非常にまれである.

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