2012 年 45 巻 12 号 p. 1180-1185
症例は67歳の女性で,心窩部痛にて紹介医を受診し急性膵炎にて入院となった.保存的加療にて症状は軽快し,急性膵炎の原因精査のため当院内科紹介となった.ERCPにて膵管合流型の胆管非拡張型膵管胆管合流異常と診断.腹部CTでは胆囊底部に不整な壁肥厚を認め,胆囊癌の合併も否定できないため,開腹肝床合併胆囊摘出術を施行した.組織学的には胆囊体部から頸部にかけては,粘膜のびまん性乳頭状過形成を認めたが,細胞異型は認めなかった.一方,体部から底部にかけては,乳頭状の病変で,軽度から高度までさまざまな程度の異型性を認め,一部には癌に相当する異型も認められた.びまん性乳頭状過形成粘膜を背景に,多段階的な異型上皮から粘膜上皮癌を認め,膵管胆管合流異常における発癌過程において示唆に富む症例と考えられた.