2012 年 45 巻 12 号 p. 1170-1179
症例は45歳の男性で,心窩部痛を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で胃体中部小彎から前庭部に複数の潰瘍性病変を認め,生検でT細胞性悪性リンパ腫と診断した.末梢血中の抗human T-lymphotropic virus type-1(以下,HTLV-1と略記)抗体は陽性であった.末梢血,骨髄中に異常リンパ球を認めず,CT,PETでは胃と所属リンパ節以外に異常を認めなかったため,胃原発悪性リンパ腫と診断し,胃全摘,胆摘,D2郭清術を施行した.切除組織中にHTLV-1 proviral DNAの組み込みを認めたが,末梢血中にはHTLV-1 proviral DNAを認めず,HTLV-1関連胃原発悪性リンパ腫と診断した.術後は補助化学療法としてTHP-COP療法を6クール施行し,術後27か月を経過したが,再発徴候なく生存中である.