日本消化器外科学会雑誌
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原著
全国死亡例調査による本邦の悪性腹膜中皮腫の検討
西 英行脇 直久河合 央木下 茂喜石崎 雅浩間野 正之
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2012 年 45 巻 5 号 p. 475-482

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抄録

 はじめに:悪性腹膜中皮腫はまれな疾患であるが,遭遇する頻度は増加している.今回,我々は人口動態統計を元に中皮腫による死亡例に関して調査を行い,我が国で行われた腹膜中皮腫に対する治療の現状を検討した.方法:2003年から2008年までの中皮腫による死亡4,860例のうち遺族の同意,医療機関の情報が得られた症例は805例であった.このうちの悪性腹膜中皮腫114例を対象として検討した.結果:男性81例,女性33例.平均年齢は64歳であった.石綿ばく露歴を61例に認めた.確定診断は,83例が開腹または腹腔鏡による生検で得られた.組織型は,上皮型61例,二相型12例,肉腫型10例であった.治療法は,化学療法が63例,手術療法が12例,手術+化学療法が3例に行われていた.予後は,全例の生存期間中央値(MST)は4.8か月であった.Cox回帰による多変量解析では,年齢,性別,腹痛の有無,組織型が予後因子であったが,化学療法や手術は予後因子ではなかった.結論:胸膜中皮腫と比較して女性が多く,上皮型の割合が高く,アスベストばく露歴を有する比率は少ないが高濃度ばく露者に多く発生している可能性が示唆された.予後不良の疾患であり,手術・化学療法が予後に影響を与えていなかった.

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