2012 年 45 巻 5 号 p. 483-490
症例は2年前に胃潰瘍の手術歴を有する60歳の男性で,腹痛,コーヒー残渣様の嘔吐にて他院に搬送され,消化管出血疑いで当院に転送された.Vital signはほぼ安定していたが,腹部は板状硬で腹膜刺激徴候を認めた.腹部CTで著明な後腹膜気腫,門脈ガス,腸管気腫および腹腔内遊離ガスを認め,さらに著明な胃壁の肥厚も認め,広範囲にわたる腸管壊死を疑って緊急手術を施行した.開腹時,無臭茶褐色の混濁腹水1,700ccを認め,後日,培養でカンジダが陽性であった.腹膜は高度に発赤肥厚し汎発性腹膜炎の所見であったが,腸管の血流は良好で虚血性変化は認めなかった.上行結腸から直腸に至る著明な腸管気腫を認めた.さらに胃体下部前壁に径20mm大の潰瘍腹壁穿通を認め,潰瘍縫縮術+ドレナージ術を施行した.自験例は,胃潰瘍が原因の後腹膜気腫,門脈ガス血症,腸管気腫に潰瘍穿孔による腹腔内遊離ガスが合併したものと推察された.