症例は20歳の男性で,交通事故で胸腹部を打撲,近医に入院となったが保存的治療で改善し退院となった.しかし受傷後12日目にイレウスを発症し当院に入院となった.入院後イレウス管を挿入し治療をおこなうも改善せず,手術をおこなった.Treitz靱帯から120cmの空腸に輪状の瘢痕性狭窄を連続して3か所認め,小腸間膜には多数の瘢痕,短縮を認めた.さらにS状結腸にも1か所の狭窄を認め,S状結腸間膜に瘢痕,短縮を認めた.腹部外傷後の遅発性空腸,S状結腸狭窄と診断し,それぞれを切除し吻合した.今回の手術は腹腔鏡手術も検討したが,腹腔内の検索を十分におこなうことが重要と考え,開腹術を選択した.鈍的腹部外傷後の遅発性イレウスでは不可逆性の腸管狭窄を伴い,しかも多発している可能性があることを十分に認識して治療をおこなう必要がある.