日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
上部消化管造影後に発症したメッケル憩室穿孔の1例
雄谷 慎吾加藤 岳人平松 和洋柴田 佳久吉原 基鈴村 潔山田 英貴榊原 綾子
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2012 年 45 巻 5 号 p. 512-521

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抄録

 症例は49歳の男性で,2009年2月下旬に健康診断でバリウムによる上部消化管造影検査を施行した.検査2日後に腹痛,発熱が出現し,翌日に当院を受診した.理学的に腹膜刺激症状があり,血液検査所見で炎症反応が顕著であった.腹部単純X線とCTで,腹水,遊離ガス像に加え,下腹部に境界明瞭なバリウム貯留像を認めた.消化管穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.開腹所見で,回腸末端より約55cm口側回腸の腸間膜付着部対側にメッケル憩室を認めた.メッケル憩室は先端半分が囊状に拡張し,茎部との移行部にくびれがみられた.囊状部分に約5mmの穿孔があり,憩室切除術を行った.組織学的所見では,囊状部分の粘膜は壊死状で異所性粘膜は確認できなかった.本症例のメッケル憩室は囊状部分基部が屈曲し内腔が狭窄する形状のため,囊状部分に貯留欝滞したバリウムによる内圧上昇と化学的刺激が契機となって発症したと考えられた.

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