抄録
目的:高度に膀胱浸潤を伴う大腸癌に対して膀胱全摘を行った場合の尿路変向術としては回腸導管を用いることが一般的である.しかし,このウロストーマは患者のQOL低下を招くことがあり,ボディーイメージも損なうために精神的苦痛を伴う.近年,当院泌尿器科では膀胱癌に対する膀胱全摘後に回腸を用いた自然排尿型代用膀胱の一つであるHautmann法を改変した尿路変向術を積極的に行っている.そこで,我々も高度膀胱浸潤を伴う大腸癌に対する根治切除後の尿路変向術としてこの方法を選択的に採用してきた.方法:2009年1月から2011年12月までにこの再建法を行った5例を対象とし,手術の安全性,術後アウトカムについて評価した.結果:術後平均観察期間は29か月で平均手術時間は635分,出血量の中央値は999 gで,輸血は2症例で必要とした.術後平均在院日数は33.4日,術後に重篤な合併症は認めなかった.5例中4例で完全立位自排尿が可能であった.1例で肺再発を認めて切除したが,5例とも生存中である.結語:我々の行った尿路変向術は重篤な術後合併症もなく安全に施行できた.QOLや長期の合併症,予後についての評価は不十分であるものの,ボディーイメージを損なわない点において患者の受け入れが良いため,適応を十分考慮すれば有用な再建方法の一つになりえる可能性が示唆された.