目的:近年Stage II–III食道癌に対しては術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy;以下,NACと略記)が標準治療となっている.当科のNACの治療成績を検討した.
方法:2008~2011年のStage II–III(T4を除く)食道癌のうち十分耐術能がある症例を対象とした.化学療法はcisplatin 80 mg/m
2 day 1,22および5-fluorouracil 800 mg/m
2 day 1~5,22~26を行い,3~5週の後手術を行った.手術は胸腔鏡下食道切除,胃管再建,頸部吻合(縦隔および腹部リンパ節郭清)を標準とした.
結果:NAC群の平均年齢は65歳,ステージ別ではIIA 12例,IIB 13例,III 44例で合計69例であった.化学療法の完遂率は81%であり,非完遂の理由は効果なし,腎機能低下などであった.手術に関して縫合不全発生率は2.8%であり,反回神経麻痺や心肺合併症の頻度も通常手術と比べて高くなく,化学療法の影響は少なかった.組織学的grade 3を2例(2.9%)に認めた.NAC群の3年生存率は62%で手術群の56%と比較して有意差は認めなかった.
結語:NAC群で周術期合併症の増加は認めず,手術は比較的安全に施行可能であった.cStage IIでは生存率の改善を認めるものの,cStage IIIでは改善を認めなかった.
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